2012年9月2日

マグス&スーパーヨット

7月終わり頃、マグスのデザインしたスーパーヨットの帆がお披露目されました。

http://www.boatinternational.com/2012/07/31/unique-sail-art-for-66m-vitters-yacht-aglaia/
http://www.superyachtdesign.com/features.asp?fid=1304


遠景だと分かりにくいけど、実際に人が乗るとかなり大きいのが分かります。


海と空の青にオレンジが映えて、晴れた日は特に目を引きそう。



Magne Furuholmenはa-haのキーボードプレイヤー、アートディレクターとして80年代にキャリアをスタートさせました。長年多くの作品を作り出してきましたが、66mのスループ、Aglaiaの1,787㎡もあるCode 1セイル(※専門店のセイルタイプを参照)は、今までで技術的に一番やりがいのあるプロジェクトでした。

ヨットのオーナーは、数年前にノルウェーでマグネの作品展を見てからアーティストを紹介されました。もとは2007年ノーベル平和賞の依頼だったClimax Orangeコレクションの半分、8作品はメインサロン等の主要エリアやキャビンを飾りました。

マグネ: 船のために作品の一部を買いたいという話だった。その船は見たことがないけど、シリーズを損ないたくない、1つの作品として一緒にしておきたいと説明した。

ところが作品を額に納めると、オーナーはさらに過去最大の作品を依頼した。

マグネ: オーナーはシリーズを船のDNAに根付かせたいと、船の帆に何か作ってみないか聞いてきたんだ。

ヨットは初めてだったが、以前に巨大クルーズ船で14階のガラス階段を手がけたことがあるので、マリン市場は初めてではない。

マグネ: とはいえ、Aglaiaは完全に違ったプロジェクトだった。クルーズ船はアートやデザインがいっぱいで、完全に感覚を爆発させて良かった。Aglaiaは素晴らしいデザインで全てが完成され、完璧な状態から始めてめちゃくちゃにするようだった

45mのモーターヨット、Aslec 4のオーナーが家族のクリスチャン・ネームの頭文字からヨットの名前を付けることから、マグネはギリシャ神話の美の神アグライアを示す辞書の意味から文字をピックアップし、さらにオーナーや子供達からもアルファベットを入れてゆったりと家族につながるよう独自のテイストを加えた。

マグネ: 物事にいろいろな角度からアプローチしたり、言語や言葉、その意味、文章の抽象的な意味なんかに取り組むのが好きなんだ。

実際に取り付けられると全く違う形になり、キロ単位の遠方からでもインパクトのあるビジュアルを目指すことが芸術的な挑戦でした。使っているうちにすり切れたり破れたり、強い風を受けたり海水の波しぶきにさらされたり、実用面での課題もありました。
これほど大きなカスタムメイドの帆を作り上げる技術も初めてでしたが、紙に描かれたデザインを帆に写す作業をすぐにマスターし、経験豊富なチーム、特に帆へのペインティングではスペシャリストであるパルマのPatrick Molony Harrisの支援を受けてデザインを完璧なものへと仕上げていきました。

マグネ: スタジオで30~25分の1のモデルから始めた。それから10分の1のテスト用セイルを作って冬の間パルマで使って機能をチェックした。いくつか修正版を作り、やっと模型からCode 1セイルに転写したんだ。最初は特大モップとペンキを持って巨大な帆に張り巡らされたハーネスに自分がぶら下がる姿を想像していたけど、非常にコントロールされた環境のステージでのペイントだった。きちんと乾かして海に出られる十分な強度を確保する必要があったからね。

NASAのために開発されたキューベン・ファイバー(Cuben Fibre日本の専門サイトにも載っていました)製のセイル、Code 1は過酷なレース用ヨットに使われる特殊な乳剤を使ってペイントされました。オレンジの部分を同じキューベン・ファイバーで作る案もありましたが、これは高くなりすぎると判断されました。

マグネ: オレンジの四角い部分はポスト・イットのメモで作った最初の模型からそのまま持って来たから、きっと世界一大きなポスト・イットだろうね。オレンジはいつも船の一部だった。オーナーが買ったシリーズに入っていたとても強い色だから。それに船はオランダのものだし、国のカラーであるオレンジが入るのは気に入ると思うよ。

完成した作品はオーナーに気に入られ、マグネも達成感があったようですが、他にも2つ船のオファーがあったけど断った。最初に依頼した人より特別さを下げるのは嫌だった。このプロジェクトは本当に自分だけのもの、と言える基準を押し上げてしまったからよく考えることになった。それに新しいキャリアを求めているわけじゃないから。
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訳しながらいろいろなサイトを見ていたら、YouTubeにこんな動画がありました。


1,800㎡なのでほぼマグスの“作品”と同じサイズ。
半端じゃない大きさですね!

マグスが船に関わった“前作”は、ノルウェーの沿岸急行船のことだと思います。
モートンが進水式に立ち会って、船の中は“マグネの作品だらけだった”と言っていた Ms Midnatsol は、マグスの作品があちこちにあるそうです。
Hurtigrutenのウェブサイトでは、船の中の様子も見られるようになっています。
http://www.hurtigruten.com/schedule/ships/hurtigrutens-ships/ms-midnatsol/?tab=onboard
360度ぐるっと回転して船内を見せてくれて、マウスでスピードや角度を変えられるようにもなっていますが、スピードアップして同じ方向にぐるぐる回っていると船酔いしたように気分が悪くなることがあります。ご注意を!